心房細動に対するパルスフィールドアブレーション
Pulse Field Ablation: PFA
1. 概要
- パルスフィールドアブレーション(Pulse Field Ablation: PFA)は、心房細動という不整脈の治療に用いる最新のカテーテル治療です。短い電圧パルスを使って、異常な電気信号を出している心筋細胞だけを選んで取り除く(不活性化する)方法です。熱を使わないため、周囲の臓器を傷つけにくいという利点があります。
- PFA用カテーテルは、企業ごとに薬事承認が進んでおり、2024年9月1日に保険収載(保険適用)されました。これにより、適応に合う患者さんは健康保険を使ってPFAを受けられるようになり、当院でも採用しております。

2. 心房細動・治療標的
- 心房細動は、心臓の上の部屋(心房)が小刻みに震え、正常なリズムが失われる病気です。胸の動悸、息切れ、疲れやすさなどを引き起こします。
- 不整脈の発生源は多くの場合、肺静脈という血管の周辺から出ます。
- PFAでは、足の付け根から細いカテーテルを入れて肺静脈の周りに配置し、短い高電圧パルスを照射して異常な心筋細胞を選択的に不活性化します。

3. なぜPFAが注目されるのか
- 非熱的:従来の焼灼や凍結といった熱によるダメージを伴わない。
- 選択性が高い:心筋細胞に対する細胞特異性が強く、周囲の食道や横隔神経などの組織へのダメージが少ないと考えられています。
- 手技時間の短縮:機器や手順によっては、治療時間が短くなる傾向があります。
- 疼痛・炎症の軽減:熱を用いる治療に比べ痛みや炎症が少ない報告があります。
そのため、安全性と効率性の両立が期待される新しいアブレーション法として、世界的に注目されています。

4. 治療の流れ(患者さんが受けるときのイメージ)
- 事前検査(心電図、レントゲン検査、超音波検査、血液検査、CTなど)
- 手術当日:局所麻酔+鎮静(または全身麻酔)で眠った状態にします。
- 足の付け根からカテーテルを入れて心臓へ到達させます。
- 肺静脈まわりにカテーテルを設置し、パルスを数回照射して肺静脈隔離を行います。
- 手技時間は病変によりますが、通常2〜4時間程度が多いです。
- 経過観察のため入院(通常3泊4日)して安静にします。

5. 合併症(注意点)
- 全身麻酔や鎮静のリスク(稀に呼吸や循環の問題)
- カテーテル挿入部の出血や血腫
- 血栓による脳梗塞のリスク(抗凝固療法で対策)
- 周囲臓器(食道、横隔神経など)への影響は従来法より少ないと報告されていますが、ゼロではありません。
6.よくある質問(FAQ)
Q. PFAは誰でも受けられますか?
A. 全ての心房細動患者に適するわけではありません。薬で改善しない発作性・持続性心房細動など、適応が定められています。担当医と適応の有無を相談してください。
Q. 再発はありますか?
A. どのアブレーション法でも再発の可能性はあります。PFAは再発率低減に期待が持てますが、個人差があります。